乳がん 手術前の諸検査
12月14日に
乳がんの手術を行うことが決まった。
ステージⅡB
左胸を全摘出しなければならない。
12月5日に
私は手術に対しての様々な検査を受けた。
肺気量分画測定
安静換気量測定 最大換気量測定
超音波検査
心臓超音波検査 経胸壁心エコー法
血液化学検査
骨シンチグラム(全身)
この日は
年一回の人間ドック(健康診断)を受診する日でもあった。
手術に対する検査に加え
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)も行った。
午前8時に受付を済ませ
様々な検査を受け
担当医の説明を受け
入院の為の様々な説明や手続きを済ませ
病院を出たのは午後5時だった。
病院の検査室をあっちへ行きこっちへ行き
診察室へ戻ったり
入院支援室に寄ったり
9時間を病院で過ごした。
バックに一冊の文庫本を忍ばせていたので
待合室での時間は実に有意義であった。
前日に本屋さんで偶然目にとまった本だった。
久々に読書の時間が取れるのを楽しみに
病院へとやってきたのだった。
検査の合間の待合室での読書は
現実から逃避できる豊かな時間であった。
私の心は癒されていた。
なぜだか幸せだった。
盲腸がん手術から1年10か月経った今
再び 乳がんであることを宣告された。
にも拘わらず
私の心は一冊の本によって救われ癒されているのであった。
無宗教の私は自分の心をどのように保てばいいのか
その術を知らなかった。
だが
一冊の単行本は
私に今からの闘病生活を
どのように立ち向かっていけばいいのか
明るい道しるべとなってくれたのである。
矢作直樹
「 おかげさまで生きる」
=死を心配する必要はない=
翌日
元気に出勤していった私に
「あっけらかんとしているね。」
社長が不思議そうに言った。
私は忙しかった。
次から次から やらなければならない仕事を抱えている。
私は忙しかった。
一か月後には旅行が控えている。
旅先でのプランがまだ完全に出来上がっていないのである。
「乳がん」であることはどうしようもない事実である。
しかし
今ほど「忙しい」ことが有難いと思ったことは無かった。
「忙しい 今」は
私の頭を占領し尽くし
倒れそうな私の心を支えてくれるのである。
亡き父の徳島弁が頭をよぎった。
「どむならんなぁ~~~」
うん。
どうしようもないね。 おとうちゃん。