一面のコスモス畑を夢見て

パールじゅんこ

2021年07月20日 00:01

 貸別荘 「颯ん家」を
 黄金色に染めて
 今日という一日が去っていった。

  

私はすこぶる元気で
相変わらず
バタバタと暮らしていた。

 腰痛もなく
 頭痛のなく
 疲れもなく
 
 夜もぐっすりと眠り
 食事も美味しく
 体調も良かった。

2月に65歳の誕生日を迎えた私は
油断すると
背中が前かがみになり
腰が曲がり始めた。

ちょっぴり
せかせかと働きすぎたかな?

私は
梅雨が明ける前に
やっておかなければならないことがあった。

毎日
5時の勤務時間が終わり
午後7時過ぎまで
貸別荘「颯ん家」の庭の手入れに追われていた。

颯ん家の周りを草刈り機で草を刈り
勢いよく生茂ってくる雑草を抜いた。




庭では
昨年の花々のこぼれダネから 
至る所で 小さな花苗が育っていた。




 
 インパチェンス
 けいとう
 マリーゴールド
 コスモス
 ユリ
 ツワブキ
 ヒメツルソバ

 





抜き取った雑草の後に
自然に生えた小さな花苗を
植え付けていった。

雨によって
移植した小さな花苗は枯れずに
しっかりと根を下ろし育ち始めた。
私は焦っていた。
梅雨が明ける前に
この作業を終わらせたかった。

夏の日差しの中で逞しく育った花苗が
秋になり満開になる様を想像すると
わくわくと心が躍るのであった。


私は
 素敵な景色を夢見ていた。



「颯ん家」の周りを
一面のコスモス畑にしようとしている。


 入り口の空き地では
 去年のコスモスの種が落ち
 沢山の苗が育っていた。

 狭い土地は自ら管理機を使って耕し
 苗を移植した。

 時間が足らないので
 家の上の段の広い土地は
 知人に耕してもらうことにした。

 家の横は
 草を刈り
 急な斜面にはいつくばって
 コスモスの苗を植え付けた。

 私は
 コスモスに囲まれた「颯ん家」を想像し
 毎日 幸せな気分で作業に追われた。

 「なんでそんなしんどいことをするの?」と
 あきれるみいの言葉を無視し
 「帰っとくぞ。」と
 黙々と野良仕事に精を出す私にあきれながら
 先に帰る主人の背中に
  「ローマは一日にしてならず」と
 投げかけ
 平戸島に陽が落ちて
 うっすらと闇が押し寄せてくるまで
 私は野良仕事に精を出した。
 

   


 穏やかな輝きを残して
 夕日も
 私を置いて平戸島に傾いていった。

 
 毎日仕事が終わった後に
 職場の近くにある颯ん家に行き
 汗だくになり作業を続けた。
 平戸島に夕日が沈むのが
 帰る時間の目印だった。

 もう少し時間が欲しかった。
 私はまだまだ働きたかった。

 「今から 帰るからね~~」と
 みいに電話を入れ夕食に間に合うように
 田舎道を車を走らせた。

 みいのおかげで
 主婦業をボイコットして
 趣味の世界を満喫しているのである。





 梅雨が明けるまでに
 終わらせたっか作業を
 どうにかやり遂げた。

 梅雨も明け
 また新しい夏がやってきた。

 私は
 はっと気がつき
 曲がりかけた腰を伸ばしながら
 せかせかと元気な日々を過ごしていた。



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