名医の訪問

パールじゅんこ

2012年11月02日 07:26

美味しい新米が届けられ・・・

でっかいラッキョ漬けが届けられ・・・

朝ごはんがすすむ根菜のぬか浸けが届き・・

スーパーには出回らないような柿が届く。


 岡田さんの訪問は続く。


みいがHAYATOの出産間近まで勤めた
会社で
臨時で勤務していた岡田さんは
昔付き合った彼女と同じ名前のみいを
我が子のように
我が孫のように
可愛がってくれた。

そして
みいを支え続けてくれる。

その暖かさに
私は感謝してもしつくせない。

みいが
血小板 カウント0の状態におちいり
血小板の輸血
ヘモグロビンの輸血
が続き
身体はパンパンに膨れ上がり
血管から血が滲み出してきて
皮膚の下で鬱血し始めた時
私達夫婦は
何の手も打てず
娘を死なせてしまうかもしれないという恐怖におびえた。

岡田さんは私達夫婦を励まし
みいを暖かく包み込み
強い意志をもって
離婚を促した。

HAYATOを父親のない子にしたくないという
みいの気持ちの前で
揺れ動く意思の弱い母親の私を
断固として導き続けた。
主人を説得し
私を支え
みいとHAYATOを
婿と切り離すことを進めた。

みいは
死の淵で 離婚を決意し
様々な諸手続きを進めた。
極限状態で進めた人生の岐路が
みいの記憶に残っているのかどうか
私達は口を閉ざしている。
婿は私たちの元から離れ
新しい家族を持った。


岡田さんは
やってくる。

変わることなくみいの顔を見て
玄関先で
大きな声で自分の近況報告をして
会うたびにふっくらと良い笑顔のでるみいをみて
安心して帰っていく。

耳の遠い
四捨五入をすると80歳になる岡田さんは
閑散とした我が家の玄関先で
近所中響き渡る声で
みいを励まし帰っていく。

みいの名医の訪問は
続いている。

「何の遠慮もいらんぞ!
 お前は
 HAYATOという跡取りを連れて
 帰ってきたんだ!

 大きな顔して実家に居座れよ!」
岡田さんはみいを支え続ける。


岡田のジイは
資格というものを持たない
みいの心療内科の名医である。