お伊勢参り 奥伊勢の夜は更けて

パールじゅんこ

2013年02月24日 20:29


真冬の夜空は満天の星で輝いていた。
冷え切った透明な空気の中で
ダイヤモンドをちりばめたように
真っ暗な宇宙が光り輝いていた。

降り注ぐ星の光の中を
私達は
小さな毛布でHAYATOの体をすっぽりと包み
落葉樹の中のととのった中庭を
コテージに向かって3~4分歩いた。

長旅の疲れは
奥伊勢 大台町にある
本館「宮川山荘」の天然温泉で癒された。




  




本館 宮川山荘の中庭には
イルミネーションがほどこされ
冷え切った空気の中で揺れ動く光の輪は
心を妖しく揺り動かした。

  恋人に寄り添い
  抱かれた肩のぬくもりに
  妖しく心の中が揺れ動く・・。  
  

 ・・・・・  ・・・・・ ・・・・・な~~~んて。

しかし  現実は・・  やっぱり現実だ。
私は幼いHAYATOの肩を抱きしめて
主人を先頭に
宮川山荘の
真っ暗な夜の中庭を歩いた。

気持ちのいい宮川温泉で旅の疲れをとり、
風邪をひかさない様にジャンバーを着た上から
小さな毛布ですっぱりと覆った
HAYATOの肩を抱き、
みいと並んで
夜空の星をちらっと仰ぎ
足元に注意しながらコテージに戻った。。・・・



あぁ ちょっぴり残念だ・・
 ムードが伴わない。  

こんなに素敵に舞台が整っているというのに
 う~~~ん 残念だ。


憧れの大台ケ原の麓の温泉宿で
一夜を明かそうとしているというのに・・・。

    

昭和の時代
大阪の街で私は主人に恋をしていた。

日本有数の多雨地域である
吉野熊野国立公園である大台ケ原に
主人の愛車 セリカ リフトバック(トヨタ車)で
ドライブを約束した矢先に
主人の年老いた父が病に伏したため
大台ケ原へのドライブは叶うことなく
私たちは結婚をし九州で暮らし始めた。

こんな形で
大台ケ原の麓にやってくる日が来るなんて
想像もしていなかった。

神さまは
時々 偶然という言葉で
素敵なプレゼントを与えてくれるものなんだ・・。

青春時代に
往かずじまいで 思いを残していた観光地の山麓で
一夜を過ごすことが出来るなんて。

私は
夜の中庭で妖しく光るイルミネーションを
宮川山荘の広いロビーから眺めながら思った。

    
   
   素敵に輝いた青春時代
   甘い恋心を秘めた青春時代
   昭和の時代は懐かしく輝いている。

   あれから 35~6年が過ぎ去った。
   私は 間もなく56歳を締めくくろうとしている。
   


   そっと 主人の腕に手を回し
   暖かいぬくもりを感じながら
   星降る夜道を歩いてコテージに向かうなら
   熟年の素敵なカップル ・・・ かな??




  あぁ 残念だ。
  あの恋の情熱はどこへやら・・
  沢山の夜を共に過ごし
  空気のような存在になってしまった主人。

  
  ごめんね あなた。  ・・・・
 
  今となっては
  あなたへの思いと同じ比重で 
  いいえそれ以上で
     あなたより愛しい(かもしれない)
     あなた以上に守らなければならない(必須)
        HAYATOがそばにいる。





                    



お伊勢参りを思い立ち
北九州新門司港から阪九フェリーで
2月9日午前6時  泉大津に降りた。

 
大阪の気温 マイナス2度というニュースに
行路を変更した。

大阪から奈良を横断し三重まで行く
西名阪自動車道~名阪国道25号線~伊勢自動車道
の予定を 
凍結の心配があったのでとりやめ、
和歌山へと南下し
台風情報で有名な潮岬のある串本を通る
国道42号線の海沿いの行路を選んだ。


 
HAYATOを遊ばせながら
のらりくらりと暖かい南紀の旅は続いた。


日本一の梅の産地である みなべ梅林 に立ち寄り
ほのかに薫る梅に浄化され、
南紀白浜を素通りし真冬とは思えない陽光を浴び
志原海岸で太平洋から押し寄せてくる波に戯れ
瀧を神として崇めた自然崇拝の地である
那智の滝を眺め
( いいえ 今となっては 那智の滝に参拝し )
伊勢神宮に向かって北上した。


紀宝町の 「 道の駅 ウミガメ公園 」で
沢山のウミガメを見て遊んだ後
七里御浜沿いを北上した。






ウミガメ公園で足を止めた後
紀宝町から 熊野市まで続く七里御浜 22km
海岸線のドライブを楽しんだ。
アカウミガメの上陸地のこの海岸は
日本で一番長い砂礫海岸で
みはま小石が敷き詰められ
穏やかな弧を描いた海岸が私たちの行く手に
どこまでも延びていた。

しかし 
密集地横の堤防は新たに工事が施され
昔からの堤防の上に
更に高い防波堤が出来上がり
自家用車の窓からは海岸が望めなかった。
津波を恐れての工事が急ピッチで進められたのか・・・?
自然を愛でるよりも
命を守る方が大切だ!  うん!

   ここまでは
   とにかくのんびりと ゆっくりと
   しあわせムードを漂わせていた・・。


私は
後部座席で 
スマホのスイッチを入れ
今夜の宿泊先を探さなければならない。
高級なホテルは予算上避けて
沢山あるビジネスホテルに連絡を入れた。


  しかし
  この時点で私はあわてた。


  甘く見ていた。



  伊勢近辺のどのホテルも満室。

  手前の多気町の数多くのホテルも満室。
    「 今夜は おそらく
    ほとんどのホテルが満室でしょう。
    お客さまで もう10件以上
    お電話を頂いています。」
  明るい声で 軽く言われてしまった・・。

  
    行く手の紀伊長島の温泉ホテル

  「 あいにく 満室です。 」  と。


お天気に恵まれた三連休の真ん中・・・。
  
  しかも 伊勢神宮のお膝元
  全国から わんさか 
  観光客が押し寄せてきているはず!



  あまかった!! 



やっとのこと
  「 たった今 キャンセルが出ました。 
    コテージが一棟空いています。
    食事がありませんがどうぞ 」と吉報。

なんと
  青春時代 思いを残した観光地 大台ケ原の麓にある
  奥伊勢 宮川山荘 「奥伊勢 フォレストピア」に
 
  今夜の宿がとれた。

  私はこの偶然に心が舞い上がった。


  いつも
  主人と語り合っていた
  「 大台ケ原 行きたかったよねえ 」
  「 いつか 行きたいよね。」が
  かする程度ではあったが
  こんな風に夢がかなった。


うっすらと日が暮れかかった大台町のスーパーで
今夜の晩御飯の買い物した。

みいは
どんな有名な観光地に立ち寄るよりも
意気揚々として
大台町のスーパーの中をショッピングカートを押して
買い物を楽しんだ。

  地元のお惣菜 酒の肴 お寿司
  明日の朝食のパン
  ジュース 牛乳

主人もビールや缶チュウハイをカートに入れた。
私もHAYATOと共にお菓子を選んだ。
 

みいが喜ぶはずである。
ちょっとしたパーテイが開けそうである。

  暗くなりかけた駐車場で
  カーナビの目的地に
  「 宮川山荘 」の電話番号を入力した。


 間もなく 人里から離れ 
 大木に囲まれた県道を
 くねくねと曲がりくねった山道を
 奥伊勢へと進んだ。


 こんな山奥に入って行って大丈夫かなぁ・・

  狸に化かされたらどうする?

  山奥の宿で 鬼婆が包丁研ぎよらんよね・・
  三枚のおふだを私たちはポケットに持っているから
  鬼婆からは逃げられるよね!
 ( 那智勝浦の飛瀧神社のお札  )
  

  

 神話の郷で
 私たちは民話を楽しみながら
 カーナビを信じて
 主人は山奥へと車を走らせたのである。


15分くらい不安な思いで山奥へと進むと
滞在型リゾート施設の
奥伊勢 フォレストピアが森の中に現れ
心底ほっとした。



この時ほど
カーナビをありがたく思ったことは無かった!


私達は案内を受け 
玄関前の車を
コテージの横まで進ませ荷物を下ろし
再び玄関前の大駐車場に車を戻した。


ログハウスのコテージに
HAYATOとみいは喜んだ。


   フォレストピア沿いに流れる「薗川」に並んで建てられた
   私たちのコテージは
    2階は洋室でベットがふたつ並び
    1階に10畳ほどの和室があった。
   リビングは広々としているうえ
   キッチンには清潔な調理器具や食器も揃っていた。
 
  



    テーブルの周りは床暖房が施され
    快適に  楽しく晩御飯を食べた。

    みいは自分の家にいるように
    楽しそうに 甲斐甲斐しく働いた。

 





   みいと二人で
   押し入れの布団や毛布に清潔なシーツをかけ
   1階の和室にずらずらーと布団を敷き
   HAYATOを湯冷めさせないように
   小さな毛布と着替えを持って
   夜も更けた人通りのない中庭をとおり
   本館の温泉に出かけた。
    


    天然温泉で体を癒した私たちは
    ふかふかの布団にもぐりこみ
 
    心地良い眠りにおちていった。

     

神々が暮らす高天原(たかまのはら)と呼ばれる
天の世界から
いにしえの時を旅してきた星の光は
ちらちらと
真冬の空気を揺らして
奥伊勢 フォレストピアの上に降り注いだ。

星座の物語を知っていたら
絵本のない今夜
HAYATOに星座の神話を
聞かせてあげられたのに
残念なことに私は
この素敵な宇宙のものがたりを知らなかった。

   


    
   静かに山の夜は更けて
   伊勢神宮へと向かう2月10日まで
   もう秒読みとなった。

       


      つ  ・ づ  ・ く