真珠のピアス
寒の内だというのに
春のようにあったかい一日だった。
ポカポカとお日様のあったかい陽ざしを受け
庭の山茶花が満開になった。
私は 思い切って一日お休みをもらった。
「 いろんな 野暮用を 片付けます。」
野暮用・・・・
私はずーとピアスに憧れていた。
若い頃から。
ピアスの穴をあけると金運が逃げる・・
運勢が変わる・・・
そんな迷信を心の隅っこでちょっぴり信じていたから
穴あけに踏み切れなかった。
一枚の結婚招待状は
私のおしゃれ心を後押ししてくれた。
姪っ子の結婚の招待状は
久々に嬉しい出来事である。
叔母である私だけれど
留袖を着るのをやめて
華やかなカラーフォーマルウエアでの出席を決めた。
そして
勤め先のお得意様である
長崎県でもトップの真珠養殖会社から
真珠のネックレス ピアスを買うことにした。
真珠の相談を持ち掛けた私を
昼休み時間に
真珠養殖会社の社長宅の応接室に招き入れた奥様は
沢山の真珠をテーブルの上に並べた。
ホワイトと
ホワイトピンクの
沢山のネックレスがテーブルの上で輝いていた。
私は
傷のない8ミリ珠の ホワイトピンクの真珠を選んだ。
そして
そのネックレスに合う色のピアスを決めた。
ピアスは
カラーフォーマルウエアに似合う
8ミリ珠より大きい真珠のものと
普段のちょっとしたおしゃれに似合う小さな珠の
2種類を選んだ。
2月の姪の結婚式に間に合うようにお願いして
養殖場の横にある社長宅の玄関を出て
仕事に戻った。
それから数日がたち
美容整形外科で両耳に ピアスの穴開けをしてもらった。
一穴 6,000円
両耳で 12,000円
若い頃からの念願のピアスをして
3月中旬の陽気の下を家に帰った。
風邪を引いて学校を休んでいる孫君は
「ばあばと病院に行く!」と
私の帰りを待っていた。
午後3時から30分間放映される「妖怪ウォッチ」を観てから
かかりつけの病院へと出かけた。
インフルエンザの検査をするということで
孫君は
待合室から離れた検査室の前の椅子に
神妙な顔をして座った。
先端が綿棒になっている長い金具を持った看護師さんが
孫くんの前にひざまずいて
金具を孫くんの鼻に刺しこんだ。
鼻の奥まで突っ込まれた孫君は
不快な顔を露わにした。
しばらくして
マスクをもった看護師さんが検査室から出てきて
孫くんにその大きなマスクを付けた。
私は ピンときた。
「先生から 説明がありますから」と
診察室に通された。
「インフルエンザです。
来週の月曜日まで学校は休んでください。」
旅行まで2週間余りある。
それまでには完治するはず。
私は胸をなで下ろした。
あとは 家族がかからないようにすること!!
私は
とにかく栄養のあるものを食べさせなければと
無知ながら
美味しいものを買って帰った。
栄養のあるもの・・・ というより
孫くんの好きなものを買いこんで帰った。
38度を最高に
孫くんはインフルエンザにつきものの高熱もださずに
ぐったりすることもなく
元気にもりもり好きなものを食べて
食欲旺盛で 上機嫌で学校を休んでいる。
でっかいイチゴを買い
高級なアイスクリームを買い
はちみつを買い
普段買わないようなすき焼き用の上等なお肉を買い
せっせと
孫くんの口に運ぶ。
元気な孫くんは
普段には食べないような高級なものを
もりもり食べて
インフルエンザに負けず
元気に家の中で好き勝手に過ごしている。
私たち家族に
インフルエンザが移っていないことを
願いながら
一日 一日が過ぎ去っている。