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2022年03月26日

春の嵐

眠れなかった。

家がガタガタと揺れた。
家の周りの木々が揺さ振られ
ビュービューと激しい音を立てていた。

時計の針は12時を指していた。
ビュービュー   ガタガタ
眠れなかった。
 午前0時30分
 午前1時

職場が気になって 気になって・・・
眠れなかった。

貸し船として貸し出している11隻の船
故障時のピンチヒッターの1隻の船
釣りイカダ
イカダの押し船
大型釣船(どんがめ号)

強風による
被害にあってはいないだろうか?




3月25日 金曜日
ニュースや天気予報は
春の嵐が来ることを報じた。

勤務時間の半日を費やして
それぞれの係船ロープを結び直し
弱くなっているロープを取りかえ
コンテナに入れたシーアンカーや
サブタの上に重しを乗せ
吹き飛ばされないようにして
台風の時と同じ対策をしたものの・・

12隻の船の停泊する浮桟橋に対して
 堤防からのロープを引いていない。
釣りイカダに対しても
 護岸からのロープを取っていなかった。
上架している沢山の中古船の
 対策を怠っている。

植木は・・・
中庭のテーブルは・・・
あのドラム缶は・・
あのフロートは・・
小さな事柄が次々と頭をよぎって
ますます目が冴えた。

家の外では
強風の激しさが増していく。

ホットミルクを飲めば眠れるかな・・?
思い切って布団を出た。

マリンウェザー海快晴
バイオウェザーサービス気圧配置図
何回も 何回もチェックをしてみた。

午前3時  南南東 風速15.2m/s
午前5時  南    風速13.7m/s
午前7時  南南西 風速10.9m/s
午前8時  南西   風速6.9m/s

午前5時~7時にかけて大雨

どうすることも出来ないが
会社が
強風の被害に遭っていない事を
願った。

超零細企業のわが社で
勤めて30年経った。
36歳だった私は30歳年を重ねた。

積み重ねてきた経験と
頑丈な体が
私の武器である。

二つの癌を患ったが
今の私の体調は
健康そのものである。

3月初めから
入院生活を送っている社長に代わって
毎日の業務を奮闘している。


ただ・・・
足元が危なっかしくて
私はよく転ぶようになった。
荒れた海上での船の上での移動が
非常に怖くなった。

「ばあば  大丈夫?」が口癖の
孫のはやとは
休みの度に私の職場で
手伝いをしてくれるようになった。
まるで家業のお手伝いをしているように
当たり前のように
仕事を熟している。

上架した船を洗浄し
船底を塗装し
船外機の
ギヤオイル エンジンオイル
エレメント アエン等の交換を
黙々と一人で熟した。

帰港した貸し船を掃除し
燃料補給 
エンジンの点検を
完璧にやってのけた。


ヤッケや迷彩柄のつなぎに身を包み
アルバイトの方たちと共に
当たり前のように
手伝ってくれるはやとに
ありがたかった。

初めてはやとが
船の底に潜り込んでペンキを塗ったのは
何時だったかな・・・?
年長組さんだったかなぁ
小学一年生だったかな・・・?
社長から「一人で塗れよ」といわれ
せっせと船の船底を一人で塗りあげた
ふっくらした小さなはやとの姿を
今でもはっきりと思いだすことが出来る。




「ばあば  どいて  邪魔!」と
私はよく言われるようになった。
もたもたと
皆の足を引っ張るようになった私は
動作が鈍く 力が足りなく
作業もスピードが伴わなくなった。

私に面と向かって
  「邪魔! どいて」と言えるのは
きっと
この世の中ではやと一人だけだろう。
 おすまし   おすまし   おすまし

その言葉の陰に隠れている
「変わってやるから どいて」という
私に対する優しさを
嬉しく有難く受け止めることが出来た。


生まれた時からはやとを
自分の孫のように
可愛がってくれて来た社長は
75歳になり腎臓を患い
3月初めから
入院生活を強いられている。

私は
従業員さんやアルバイトの方々に
助けられながら
事務全般から
雑用や 釣り客の接待や
電話の応対 等々・・
社長の留守を守って
はやとの成長に関わってきてくれた
社長に恩を感じながら
超多忙な日々を送っている。


私たち家族が
到底教えてあげることが出来ない
 海に対しての知識や
 釣りに対しての知識や
 船舶機械の修理等の知識などを
社長は
はやとに教え込んでくれたのである。






午前4時を回った。
まだ雨は降りだしていないが
相変らず風が吹き荒れている。

社長の留守の会社が
春の嵐によって
被害を被られないことを願って
気が気じゃなかったが
ただ 時間が過ぎて行くのを待つしか
私にはできなかった。

過ぎてきた日々を懐かしがりながら
むかえる日々に希望をつなぎながら
眠れない夜が明けていこうとしている。


令和4年3月26日
午前4時50分

春の嵐

春はあけぼの
 やうやう白くなりゆく、
  山ぎは少しあかりて、
紫だちたる雲の細くたなびきたる。




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えっちら おっちらと進む人生。
苦しいことも乗り越えたはず。
悲しいことも通り過ぎたはず。
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絶対幸せで楽しいはずと
100%信じている私こと じゅんこです。


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