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2012年06月16日

摂食障害の娘と共に 愛しいみい

  「お変わりありませんでしたか?」

共済病院 泌尿器科部長 江口二朗先生
穏やかな笑顔で私と娘みいに問いかけた。

6月14日(木) 午前11時。
 みいは様々な検査を終え
 診察室の中で
 白髪の混じった江口先生の前に座った。

4月10日(火)
次女 みいの尿管結石の手術に当たってくださった
江口先生は
真剣に娘の命と向き合ってくださったひとりである。

5月24日(木)に退院してから
3週間しか経っていないというのに
遥昔別れた懐かしい恩師に再会したような
懐かしい思いが
静かに押し寄せる波のように
私の心に満ちてきた。


  「 食は進んでいましたか?」
と問いかける江口先生に
娘はかわいらしく落ち着いた口調で
  「はい」と簡潔に答えた。

少し言語障害の残っている娘の口調は
なんだか
とてもかわいらしく聞こえる。

  血液検査
  尿検査
  超音波検査
  レントゲン

すでに済ませた検査結果を見つめなおしながら
 

  「非常に良い検査結果が出ていますね。」 

江口先生は話を進められた。



検査結果
全てのデーターに異常が見られなかった為
左尿道に投入されたままの管を抜くことにした。

みいが処置室に移った僅かな時間に
江口先生は私一人を診察室に招き入れた。

   「どうでしたか?」

短い質問に全てが含まれていた。
多くを問いかけられなくても
江口先生の言おうとされていることの全てが解った。

  「はい 徐々にですが、
   全てが良くなってきています。
   楽しそうに 暮らしています。」

私も簡潔に答えた。
はにかんだような笑顔の江口先生に頭を下げて
診察室を後にした。
間もなく娘は廊下で待つ私の元に現れた。
左尿管に投入されたままの管を抜いた。


1か月後の7月12日(木)再来院の予約をして
病院を後にした。
正午をとっくに過ぎていた。



 
私と主人が青春時代を過ごした大阪の地を後にして
佐世保の地に嫁いできた昭和51年頃から
なんら変わることのない老舗の
2階のパーラーの窓際の席で
みいとメニューを覗き込んだ。

私と同年代の女性客で店内は賑わっていた。


  みいは
  たくさんのメニューを
  楽しそうに覗き込み自ら注文をした。


 私たちはゆっくりと食事を楽しんだ。

  
 
摂食障害の娘と共に 愛しいみい


更に
みいはデザートにパフェをリクエストした。
 私たちは久々に女だけの楽しい時間を過ごした。



  常に行動を共にする我が家の男性軍・・・・
  HAYATOと主人がいたなら
   決して選ばないパーラーで
   決して選ばないメユーを
  みいと二人っきりで楽しんだ。ピース


摂食障害の娘と共に 愛しいみい


私たちを見つめる人がいるなら・・・
 パーラーの中で私達親娘を見つめる目があるなら・・・
誰も娘が摂食障害であることを苦しんできたなどと
信じないような雰囲気で
みいは昼食を楽しんだ。



  ストロベリィシロップの薫ってくるような
  トリプルパフェは
  幸せそうなみいの口元に運ばれていった。


私は大きな一つの山を越そうとしているのを感じた。


摂食障害の娘と共に 愛しいみい


  大飯ぐらいピースの私でさえ
  幸せも詰め込んでおなか一杯になった。



主婦業に勤しんでいたみいは
あまり洋服を持っていなかった。

私は
みいをショッピングに誘った。
 「 いつも 家事をこなしてくれるから
   今日は お母さんからのプレゼントだからね。」


最初にみいに告げた。


  私たちはあちこちのお店を回った。

  疲れを見せることもなく みいは
   赤いストライプと
   かわいいセーラーカラーの Tシャツを二枚選んだ。
  
  私はみいに
  痩せた体型をカバーする たぽっとしたパンツを探した。

  佐世保商店街「四ケ町」のたくさんのお店を回り
  2枚のパンツを買った。

夕食の買い物をして
駐車場を出たのは午後4時近くになっていた。

近くの高速インターへと車を走らせた。
摂食障害の娘と共に 愛しいみい


「 お母さん
    どんなに思い出してみても
      どうして入院していたのか が 解らない。」

「 なんで 病院にいたのかが  思い出せない。」

 
  明るい日差しの中車を走らせた。
  みいはしばらくして私につぶやいた。

「 レントゲンに映っていたよね。
  尿道に入っていた管が・・・。

  あれが証拠だよ。

  左尿管結石の手術のため入院して
  その後の状態が悪化したので長引いたもんねぇ。」

「 共済病院に入院した日のことも
  何のため入院していたのかも
  思い出せない・・・。

  どうしても
  出てこない・・・。」



  「 どんな感覚?
       気持ちが悪い・・・? 」


みいは黙った・・・。


  高速の流れに乗った車は快適に進んだ。

  CDから竹内まりや の歌う
  効きなれたメロディが心の奥底に
  優しく流れてきた。
  私は口を閉じた。


  みいも静かに心を傾けているかのように感じた。


    
   ♪黒♪黒元気をだして ♪黒♪黒  

    涙など見せない 強気なあなたを
    そんなに悲しませた人は誰なの?

    終わりをつげた恋にすがるのはやめにして
    ふりだしから また始めればいい

    幸せになりたい 気持ちがあるなら
    明日を見つけることは とても簡単


    少しやせたそのからだに 似合う服を探して
    街へ飛び出せばほら みんな振り返る

    チャンスは何度でも 訪れてくるはず
    彼だけが 男じゃないことに気づいて

    あなたのちいさなmistake いつか想い出に変わる

    大人への階段を ひとつ上がったの

        人生はあなたが思うほど悪くない
    早く元気を出して あの笑顔を見せて 
    ラララ・・



優しい歌声は しっとりと力強く私の心を満たした。
今 みいに語りたい全てが
竹内まりやの歌声によって
みいの心に流れ込んで言ったかのように感じられた。

みいの傷ついた心は
優しいメロディに抱きかかえられているかのように
思われた。

快適に流れる車の中でみいは目を閉じた。

私は口を閉ざした。

  優しいたくさんの歌が
  優しくそよぐ風が
  優しく降り注いでくる陽射しが


  みいを守ってくれると・・・
  みいを立ち直らせてくれると・・・

  私は信じられる。

私はただ 黙って見つめていればいい。

幸せに 平穏に過ぎていく毎日を整えながら
黙って 一緒にみいと歩んでいけばいい。

そんな風に思える。

 

 摂食障害の娘と共に 愛しいみい



Posted by パールじゅんこ at 06:53│Comments(0)
 
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悲しいことも通り過ぎたはず。
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