てぃーだブログ › 浮雲 › 摂食障害 克服への道のり 卒業

2012年09月18日

摂食障害 克服への道のり 卒業

乾いた大地に水が注ぎこまれていく・・。

柔らかくふんわりとした大地は
気持ちよく
注がれる水を受け入れた。


みいの心が見えたような気がした。
みいの心が素直な大地のように感じられた。


爛漫の春 4月に命を失いかけたみいは
主治医江口先生をはじめ
沢山の共済病院のスタッフの方達の介抱を受け命を救われた。
生命力あふれる5月に
私達家族の元に帰ってきた。
私達家族は心を病んだみいを前に
心を乱すような余計な言葉を閉じ込めた。
いい言葉だけを選んでみいと共に生きてきた。
私の頭の中には常に主人の言葉が支配していた。
「 ほっておけ   ほっておけば治る。」


私は感謝の気持ちだけを口にして
暮らしてきた。


楽しい家族の行事をたくさん取り入れて
日常生活に変化をもたらしながら
みいと共に暮らしてきた。


容赦なく照りつける太陽は
娘の心に力を与えたのだろうか。
木陰を吹いてくる爽やかな風は
娘の心を癒したのだろうか。
毎日
みいはのどかな家の周りを散策した。
毎日 毎日
みいは早朝に 昼に 夕に 風に吹かれた。


   傷ついたみいを 
   ふんわりと見下ろした庭先のキウイの花は 
 摂食障害 克服への道のり 卒業

 
  みいに見つめられる日々の中で
  しっかりと実を結んだ。
 摂食障害 克服への道のり 卒業


風のささやきに負けた太陽は次第と退き始め
心に豊かさを増す秋が訪れ始めた。

みいの心と体は実りの秋に足並みをそろえた。
     


 ** 9月11日(火) **

江口先生はパソコンのデータから目を離し
笑顔を娘に向けた。


 「 卒業にしましょうか。」

そしてさらに 私に視線を移した。

 「 非常にいい検査結果です。
   生活が安定しているのがよくわかります。
   
   食事も美味しいでしょう。
   バランスよく食事をとっていってください。 

   結石も見当たりません。

   今日で卒業としましょう。」

私達は命の恩人である江口先生に
頭を下げて診察室を出た。

二人とも
自然と笑顔がこぼれた。

気さくな看護師さんに私たちは頼んだ。
「体重計を貸してください。」
我が家の体重計は少し前から壊れていた。

  みいはためらうことなく私の目の前で
  体重計に乗った。

  「 35kg」
  二人でメモリを覗き込んだ。

ふっくらしてきたみいの両腕をさすって笑いあった。

 「 こんなに 太ったのにね・・・!
   まだ 35kgなんだね。」

なによりも
私が覗き込んだことを拒まなかったことに
私は
みいが摂食障害を乗り越えたことを感じとった。

私達は峠を越した
谷を這い上がった。


   摂食障害 克服への道のり 卒業 

   美味しいものを
   「 美味しいね。」と
   言葉に出せる幸せをかみしめて
   二人で ランチを楽しんだ。
   摂食障害 克服への道のり 卒業
    
   それは
   私とみいとの卒業パーテイだった。


   秋の味覚をふんだんに取り入れた
   豆腐料理専門店「梅の花」
   ( 佐世保 四ケ町 ) で
   二人だけの時を過ごした。

   みいは
   私と同じ量のランチを完食した。

   
    
   摂食障害 克服への道のり 卒業



沢山の葛藤があった。
沢山自分を振り返った。
沢山子育ての経緯を見つめなおした。
無責任な情報に振り回された。
   愛情が不足していた・・・
   母親である私が仕事をしていた為起こした過ち・・・
   生まれ持ってみいに障害があった・・・


でも
昨今のみいの回復ぶりを見つめていると
全て過ぎ去ったものとして
忘れることを許されるように思われる。

  みいの病んだ心は立ち上がった。

明日はどうなるかわからないが
今 そんな風に私は感じる。
いいえ
それは母親の直感と言わせてもらいたい。


人間本来が持っている
 治癒力
 学習能力
そんな基礎力によって
みいは回復を始めた。
知的能力を損なわれなかったみいは
家庭において日増しに回復を果たしたように感じられる。


高次脳機能障害という病気の知識のない私には
みいの行動は非常に不思議なものだった。

     
  あちこち
 
  虫食いのように記憶が残っていない。
  
  入退院を繰り返したはっきりした記憶や
  
  離婚に踏み入った経緯や行動の部分が欠如した。
  それは思い出したくないという気持ちが
  鍵をかけたかのように思われたが
  心身ともに極限状態に陥って生きていたため
  記憶として脳に残らなかったようにも思われる。

  洋服を着替えられない・・
  その日に着替えた洋服をきちんとたたんで入浴中の
  みいに声をかける。
  「汗をかいているから着替えなさいよ・・」を繰り返した。
  声をかけないと何日も着替えようとしない。

  HAYATOの
  幼稚園の準備が整えられない。
  お箸は毎日洗えるようになったのに
  同じリュックに入っているにも関わらず
  着替えの体操服 タオルを取り換えることが出来ない。
  繰り返し 繰り返し みいを促した日々を送った。

  夕食のおかずがリピートされる。
  毎晩3品のおかずを準備する我が家は
  主人の酒の肴に簡単な品を一品プラスする。
  それを
   丸てん(魚のすり身揚げ) と 厚揚げの素焼きの2品を
   毎日 毎日繰り返す。
  美味しいので口を閉ざす。
  まぁいいか!  と私は 口を閉ざす。
  たまに 優しく諭してみる。
  「 今日は 違うもの こしらえようか・・」
  素直に従って 別の一品が準備されるが
  又
    丸てんと厚揚げが繰り返される。


  買い物が重複される。
    食品入れの棚には
    マーボー豆腐の素があふれ
    マヨネーズの買い置きが増える。


  非常に時間にきっちりと行動する。
  時間が来ると買い物に出かける。
  雨が降ろうと
  お客様が来ていようと
  きっちり同じ時間に出かける。

  同じ時間が来ると
  お散歩に出かける。
  家の周りを数分。
  食事の準備をしていても
  包丁を置いて 散歩に出かけないと気が済まない。

一定のリズムを繰り返そうとするみい。
見るに見かねて
強く注意してやると治まり
我に返ったかのように新たな正常と思われる行動が加わる。


そんな日々を繰り返し送っているうちに
早朝ののお散歩の時間を縮めて家に入り
HAYATOのリュックの中身をチェック出来るようになった。
幼稚園へのお便りが毎日のように書けるようになった。
幼稚園からのお知らせにそって
 カレーの日のスプーン。
 スイミングの日の準備。  と
HAYATOの身の回りの世話がほぼできる様になってきた。
ほぼ・・・。

言葉もスムーズに出るようになり
会話が当たり前に成り立つようになった。
ほぼ・・・。


私は今
次の段階へとみいを導こうとしている。
みいに社会生活の中での刺激を与えてみよう思う。


「 連れてきて働かせてみないよ。」と
みいを小学生のころから知る
私の勤務先の社長は快く声をかけてくれる。
社長の好意に私は頭が上がらない。


多くの人が出入りする私の職場は
きっと
みいに新たな成長を促してくれるだろうと信じられる。 

  

 車    車    車    車               

台風16号の影響で一日中休みになった日曜日に
家族4人で
昔からの馴染みの車販売店を訪ねた。


今年3月末
きっと元気になるだろうと信じて
みいの為に車買い替えの話を進めていた。
しかし
重体に落ち入ってしまったみいに慌て
商談を中断していたので再び車の手配に伺った。

みいを独身時代から知り
我が家の車のアドバイザーである
誠意ある年配のセールスマンは
何もなかったかのような明るく話しを進めた。

試乗者の後部座席で
「 本当に よかったですねぇ。」と
力強く一言私に 暖かい声をかけた後
熱心にハンドルを握る主人と
車の性能の話に盛り上がった。

私達は時間をかけることもなくみい専用の自動車を注文した。


今年の3月末
独身時代からの思い出の詰まったみい専用の自動車が
ターボの損傷、足回りの異常が出た為 廃車に踏み切った。
「うちの代わりに ワゴンRが死んでくれたね。」と
みいは笑った。
その数日後に壮絶な死との戦いの日々が訪れるなんて
誰ひとり夢にも思わずに 
みいの言葉に同調して笑ったのだった。



私達夫婦は
みいに希望を与えたい。
日増しに回復していくみいの治癒力を信じ
車によって行動範囲を広げさせたい。


約1か月後の秋たけなわの頃 愛車を迎え
みいは
新たな気持ちで
元気で暮らし始めることだろう。



 今 みいの心は すくっと立ち上がった。


家族だけでしっかりと支えなければいけない時期を
卒業出来たように思われる。


私の脳裏には常に長女の声が響いてくる。
  「 お父さん お母さんは先に死んでしまうんだよ。
    二人がいなくなった後
    みいが 一人で生きて行けるように
    してあげなければいけないよ。
    HAYATOには HAYATOの人生があるよ。
    HAYATOに寄りかからないで
    みいが 一人で生きていかなければ!」

みいの一生を
HAYATOの一生を
支え続けてくれるであろう
長女と婿のありがたい言葉に
私達夫婦は答えて行かなければならない。




基礎学力等の基礎的な知的能力を損なっていない
みいの脳に
それらを応用した論理的思考力や創造力を
培っていかせなければならない。
そのためには社会との交わりが不可欠だろう!と
素人なりに考える。


高次脳機能障害について
専門的な知識など何一つない私だが
私は
みいをこの時点においていけない。
地球は休むことなく自転を繰り返す。
私達全ての生命は成長を遂げながら
明日に向かって運ばれていく。
それは 
成長と共にやがて来る永遠の別れの日に向かっている。
みいにも向上心を引き起こし
共に
明日に向かって歩き出させなければならない。

自立したひとりの人間として
力強くみいを生きていかせなければならない。
みいはHAYATOを導いていかなければならない。
みいは
社会との交わりの中で回復していってくれるだろう。
沢山の人々の優しさや厳しさは
みいを成長させてくれるものと信じたい。



江口先生はみいの背中を押してくれた。

 「 卒業しましょうか。」

 

それは 力強い魔法の言葉であった。

みいの心はしっかりと受け止めた。

言葉としては出すことは無かったが
みいの言霊が聞こえてきたように思える。

 「 摂食障害は 卒業します。! 」








Posted by パールじゅんこ at 06:37│Comments(2)
この記事へのコメント
おめでとうございます。私も続きますよ。お幸せに。
Posted by garagelife at 2012年09月18日 20:20
garagelifeさま

  約束してください。
  きっと
  続いてきてくださいね。

  心休まる日は
  きっとやって来るはずです。

 
Posted by パールじゅんこパールじゅんこ at 2012年09月18日 22:42
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 15人
プロフィール
パールじゅんこ
パールじゅんこ
えっちら おっちらと進む人生。
苦しいことも乗り越えたはず。
悲しいことも通り過ぎたはず。
やってくる明日は
絶対幸せで楽しいはずと
100%信じている私こと じゅんこです。


オーナーへメッセージ