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2013年07月22日

誕生のドラマ

誕生のドラマ

   
  夏休みが始まった日
  HAYATOは
  裏庭で蝉の抜け殻を発見した。



  
  驚くほどたくさんの抜け殻が
  HAYATOの目の前の
   ベニカナメモチの葉っぱや
   クロガネモチの木の枝や
   足元の雑草など
  到る所にくっついていた。

誕生のドラマ

誕生のドラマ
  夏休みになったHAYATOは
  容赦なく照りつける太陽に負けることなく  
  早朝から海に出かけて行った。

誕生のドラマ    誕生のドラマ
            
   
  たくさんの鯵を釣って帰った夕方
  裏庭で
  HAYATOは大きな声で私を呼んだ。
  

  「 ばあば 変なものがいるよ! 」

  私は足元の草の上を覗き込んだ。
誕生のドラマ
  そこには
  いっぴきの蝉が今まさに脱皮しようとしていた。

  私は
  テレビの中でしか見た事が無かった
  この光景に夢中でシャターを押した。

  しばらく
  眺めていたが その動きに変化はなかった。

  ピンと来ないHAYATOはすぐに飽きて
  別の遊びにはまった。


  夕食を終わらせ夕闇が迫ってきた頃
  こんなチャンスはめったにない!  と
  主人と共に
  HAYATOを連れて
  再び 蝉の脱皮している様子を見に行った。


  ストンと闇が迫り
  真ん丸いお月様が闇を照らした。
  懐中電灯を片手に裏庭に言ってみると
  神秘の世界が広がっていた。
誕生のドラマ

  私はど田舎で育ち 
       57年生きてきて
  主人もそれなりに片田舎で育ち 
       58年生きてきて
  それは
  二人とも初めて目にする光景だった。


  HAYATOと一緒に覗き込んだが
  夕方目にした場所にはあの蝉はもうどこにもいなかった。
  しかし
  周りのベニカナメモチに驚くほどの蝉が止まり
  脱皮をしていた。
    たくさんの蝉の誕生のシーンが目の前で始まっていた。
  それは時間の流れに身を任せ
  非常にゆっくりと進んでいた。
  
  もうすでに殻だけが葉っぱにくっついていたり
  殻から体が出てきたものや
  すでに生まれ変わり
  枝にぶら下がっているものもたくさんいた。


  私達は
  その光景を素晴らしい発見をしたかのように
  盛り上がって 
  懐中電灯の光をまっすぐ当てないようにして見つめた。
 
誕生のドラマ 

 
  しかし
  そのスピードはおそく
  目の前の光景の値打ちが解らないHAYATOには
  黙って待つことが出来なかった。
誕生のドラマ

誕生のドラマ



  興奮しているのは
  私達夫婦だけだったのかもしれない。
    私は・・
    主人は・・
  この蝉の誕生のドラマを
  時間の流れに任せて一部始終眺めていたかったが
  幼いHAYATOは
  ゆっくりと進むシーンを黙って眺め続けるには
  幼すぎた。


  「閑かさや岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉」

  ・・・と詠まれると
  森の奥深くの清涼なひと夏が想像できるが
  実は蝉しぐれの轟音ほど
  悩ましいものはない。
  止まることなく鳴き続ける蝉の声は
  耳鳴りかと勘違いするほどである。

  都会の騒音の中で暮らすのと匹敵するほど
  いいえ それ以上に
  やかましい。

  主人が
  蝉を見つめながら話した。 
  「 HAYATO 
    蝉は7年間土の中で暮らし
    地上に出てきて1週間しか生きんとやけん
    捕まえたらすぐ逃がしてやらんばぞ! 」
  HAYATOは神妙な顔をしてうなづいていた。
誕生のドラマ

  

  
  満月が 笑っているかのように私たちの上に
  優しい光を投げかけていた。
  HAYATOは大きなあくびをひとつした。

  いろんな
  蝉をながめた夕涼みは中断するのが名残惜しかったが
  裏庭を後にした。

  小学生になったHAYATOの夏休みは
  始まったばかりである。


誕生のドラマ


誕生のドラマ



Posted by パールじゅんこ at 02:58│Comments(4)
この記事へのコメント
時を同じくして、娘からもセミの抜け殻の写真が送られました。
関西の下町で育ち東北に住んでいますが、こちらでは見ることがありません。

明日帰ってくるので、芭蕉の句が詠まれたところへ行ってみようと思います。夏はどんなだろう?蝉の声は聞こえるだろうか?ちょっと楽しみです。
いいところなので、お勧めします。
山形の山寺(立石寺)です。

一緒にいる上の娘が体調をくずし、心配で過食に拍車がかかっているようです。
お互いの存在が頼りであり、ストレスでもあるので、帰省のタイミングはそれぞれです。上の娘には大切な実習の最後になって、疲れがでたんだと申し訳なくて…。

下の娘の不安を聞き、今回は病院に付き添ってくれた大家さんがふたりに話してくれます。「うまくいかないことがあるから人は成長できる」と。
娘の病気から、周りの人に恵まれていると感じることが増えました。
ありがたいことです。
Posted by 小町 at 2013年07月25日 18:21
小町さん
私は 旅が大好きです。
それは どうもDNAのせいのような気がします。
私の親族には私のように旅好きが非常に多いからです。
私はまだ 東北、北陸には行ったことがありません。
沢山の綺麗な 魅力のある所でしょうね。
ぜひ 訪ねてみたいものです。

娘さんたちはお二人で一緒に暮らしているんですか?

子供たちが成長すると 親がしてあげられることは
僅かな部分ですよね。
周りの方々に支えられて暮らしている・・
本当にありがたいことだと 私も痛感します。

私の三人娘の末っ子も
結婚し働きながら子育てをしています。
先日二番目の子供が生まれました。
私は末娘の為に手を差し伸べてあげることが出来ません。
が、末娘はお舅さん。お姑さんから大切にしていただき
友人や 職場の方々・・・
沢山の方々に支えられ、守られ日々を暮らしています。

本当にありがたいことです。
末娘に言ってきたことは
「 いつも 笑顔でいなさい。
  あなたが出来るお返しは 笑顔でいる事よ」と
  言ってきました。

「 ご近所の方にも
  職場の方にも
  笑顔で気持ちのいい挨拶を欠かさないよう にしなさい。
  あなたが困ったときは 必ずその方たちが救ってくれるはずよ。」と
メールのやり取りをしています。

三人の娘たちが大人になってからというもの
私はみいとともに歩んできました。
長女にも なにもしてあげられません。
特に 三女には何もしてあげることが出来ません。
しかし 三女は実に逞しく人生を切り開いていっています。
心の中で応援してあげる事しかできませんが
小町さんと同じ思いです。
周りの方々に恵まれている幸せを感じます。
Posted by パールじゅんこパールじゅんこ at 2013年07月26日 03:00
娘たちは、私の実家でおじいちゃんと暮らしていました。が、下の娘の大学教授にシェアハウスを紹介されて移りました。他の学生と4人で暮らしています。
上の娘は不便になるのに一緒に移ってくれました。たぶん、疲れが出ていると思います。大家さんがよくしてくれています。

私はこちらにいる時には知人に預けて仕事をしています。それなのに、私が上の娘を頼りすぎて行けなかったことを悔やみます。精神的な病なので、土日の休みがありません。
3ヶ月の実習に休みがなかったことになります。負担をかけすぎてしまったようです。
私を気遣いSOSが出せなかったようなので、これからは通うことにしようと決めました。
Posted by 小町 at 2013年07月26日 07:34
小町さん
私もずーと働いて子育てをしてきました。
ただ、三人娘たちが幼いころには専業主婦でした。
それから娘たちの成長に合わせて
パート 事務職のみの正社員 そして
娘たちが成長してから今の仕事に従事しています。
私は教育ママゴンでした。
仕事人間になったのは末娘が高校生になった頃です。
決して子育てに手を抜いたつもりはありませんが
どうも 娘たちには伝わっていない様です。
残念なことです。

私はみいの一件で
仕事ばかりしていた自分を責めました。
みいは忙しい私に気を使ってばかりいたように感じていました。
しかし、自分にまかされた仕事を放りだすことは出来ませんでした。
悩みながら 退職願を出したり、突き返されたりしながら仕事を続けました。
みいは私の職場に出てくることによって
回復で来ました。
今 回復したみいは 私の仕事場でお手伝いをしてパート収入を得ています。
私は今 仕事を続けてよかった  と思っています。

今でも
私にゆとりがなかったことで引き起こした
家族の苦しみだったと思っています。
しかし
乗り越えることが出来た今では
仕事を続けていてよかったと思えます。

小町さんもきっと
私と同じような思いで働いているんでしょうね。

お互い 健康に気を付けましょうね。
Posted by パールじゅんこパールじゅんこ at 2013年07月27日 22:47
 
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パールじゅんこ
パールじゅんこ
えっちら おっちらと進む人生。
苦しいことも乗り越えたはず。
悲しいことも通り過ぎたはず。
やってくる明日は
絶対幸せで楽しいはずと
100%信じている私こと じゅんこです。


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