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2013年12月17日

そして父になる

おもちゃの人形は三つしかなかった。
  子供は四人いるのに。


ん?   なにが始まるんだろう?

書き出しから興味をひかれた。

地上30階建ての高層マンションの
26階の2LDKに住む
「野々宮良多」がこの物語の主人公であるが
その妻の「みどり」と 
息子の「慶多」との三人家族が
この物語の中心人物である。

東京の大手建設会社の花形部署に籍を置き
チームを引っ張る良多は自信に満ち溢れ
休日など取れない程仕事に没頭していた。
控えめな妻 みどりは息子慶多を育てながら
豊かで幸せな生活を送っていた。

慶多の小学校受験を終えた時
思わぬ事件が起こったのである。

六年前に生まれた慶多は
産院の不祥事で「取り違えられた」
他人の赤ちゃんであった事が発覚した。

「血」のつながりか・・
6年間注ぎ続けた「愛情」か・・・
二者の前で揺れ動く
ふた組の家族の物語の幕が開いたのである。


「琉晴」と名付けられた良多の実の息子は
斎木雄大とゆかり夫婦 
そして妹弟や祖父に囲まれて
気取らない賑やかな家庭の中で
のびのびと育てられていた。

良多とゆかりが築いてきた過程とは
まるで正反対の家庭環境であった。

静と動・・・ とでも言えるような。


慶多と琉晴を交換するにあたっての
みどりとゆかりの苦しみ 葛藤が
手に取る様に描写されていて
私も物語の中に
母親としての感情が入り込んでしまった。

とんでもない問題が降りかかってきた良多は
家庭崩壊の危機に面する。
更に
左遷とでもいえる職場移動を強いられたのである。

業界の花形として活躍していた42歳の良多は
否応なしに
第一線から退かなければならなくなった。

そのことは
平穏とは言えなかった生い立ちを
必死でカバーして 
努力を重ね創り上げてきた良多の人生を
彼自身が見直すチャンスを与えたのである。

幼い慶多の感情
幼い琉晴の行動
みどりの感情
良多の感情
そして斎木家のおおらかな暖かさ。

実に二つの家族が
正反対にバランスが取れていて面白かった。


面白かった・・・・と言えるのは
この小説の終結が
実に爽やかですがすがしかったからである。

答えのないままに
解決策のないままに
物語は終わってしまったが
この二家族の行く末は非常に風変わりだが
暖かく愉快な生活が始まりそうに思えた。

心の中が
ふわっと救われたように感じられた。

左遷により
仕事中心の生活から
家族へと目を向けることが出来るようになり
過去の自分の生い立ちにまで
心を通わせることが出来るようになった良多の選択は
非常に爽やかで現実味を帯びていた。

東京の生活を捨て
みどりの年老いた母親が一人で住む
大きな家に移り住む。
そこ群馬の街は斎木家の近くである。
良多は優れた行動力できっとその考えを実行し
彼の優れた能力は人生の軌道修正をした後も
成功を収めることが出来るように思えた。

「赤ちゃん取り換え問題」
こんな大きな事件を抱えた二つの家族に
とても楽しい未来が待っているように思えた。

とても素敵な言葉でこの物語は完結した。

「 ・・・・雄大がカカカと笑った。
  子供たちの笑い声も聞こえる。
  もう誰が誰の子で、
  誰が誰の親なのか見分けがつかなくなっていたー。」


    ふたば    ふたば    ふたば

「そして父になる」を読み終えた私は
この本を買ったときに
書店でつけてくれたブックカバーを外した。


  第66回カンヌ国際映画祭
  審査員賞 受賞

  主演 福山雅治

  そして父になる


 表紙は映画出演の二家族の俳優の写真だった。
 物語の内容と
 その俳優の風貌がぴったりで
 何回も 何回も 眺めてしまった。

 新聞の映画欄を眺めた。


 あれ?
 そんなはずはなかったのに・・・

 勘違いも甚だしい。
 上映していない。

 とっくに終わっていた・・・。  とっくに?

そして父になる


 
 あ~~~あぁ。

 
  ビデオソフト  レンタルはいつかなぁ・・・・?




Posted by パールじゅんこ at 02:58│Comments(0)
 
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苦しいことも乗り越えたはず。
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