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2015年06月28日

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

えっ?

心の底から脳に伝わり瞬時に出た言葉であった。

えっ?

私の口から出たその小さな言葉は
白いコンクリートで囲まれた広大な空間で
静かに響き渡った。

陰影のついた白いコンクリートの空間のなかで
ひっそりと静かに佇む人々の姿はまるで
そのもの自体が描かれた絵のようであった。

動きのない世界に私は足を踏み入れたのだった。

予備知識を持たないまま踏み入れたその世界に
私は不意を突かれ
思わず・・・・
  思わず「 えっ?」と発してしまった。


その白いコンクリートのドームの中は
楕円形に開口された両サイドの天井の大きな穴から
 流れていく雲を目のあたりにできた。
 そこには風がそよぎ込み
 周りの木立でさえずる野鳥の声がひびき渡り
 足元では演出された水滴が珠となって動いて回っていた。
そこでは地球の回転音をBGMに
ゆっくりと流れる動画の世界が広がっていた。
  

動きを止め 息を止め 
時の流れに身をまかせた多くの観光客たちの姿は
アーチ形のコンクリートの空間の中で
まるで描かれた作品のように見えた。
その有様は絵の中のそのものであった。

2,334㎡の床面積の
白いコンクリートのキャンバスに描かれた絵を見ているような
錯覚に陥った。

沢山の絵画が壁にかけられている様子を想像して
瀬戸内海に浮かぶ小さな島にある豊島(てしま)美術館に入った私は
一枚の絵も彫刻もないことに心底驚いた。
そこは床面積2,344㎡の柱一本ない広いドームだった。
入口と天井に2か所大きな卵型の穴が空けられているだけの
コンクリートの建物であった。
その内部にはな~~~んにもなかったのである。

一歩足を踏みいれた途端
想像もしていなかったその風景に私は驚き主人と顔を合わせた。
主人は楽しげに声を出さずに顔一面で笑った。
予備知識のない私たちは不意を突かれたのである。

静まり返った豊島美術館の中で我に帰った私は
子供のころの美術の授業で習った
フランスの画家ミレーの作品を思い出した。
豊島美術館の広大なコンクリートの床で佇む観光客の姿は
ミレーが描いた「晩鐘 」の中の農夫たちを見ているようであった。


瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

落ち着きを取り戻した私はどうしていいのか戸惑った。
どのような態度をとればいいのか解らなかった。
肩を並べた主人と顔を見合わせた。
どうすれば粋な動きが出来るのか瞬時に考えた。
言葉を交わさなかったが主人の気持ちも伝わってきた。


ドームの中の人々は実に様々な格好で時の流れに添っていた。
 上を向いて寝転んでいる人
 しゃがんでいる人
 膝を抱え込んでうつむいている人
 背筋を伸ばし正座している人
 リラックスして寝転んでいる人
 突っ立っている人
それぞれが自分の世界に入り込んでいた。

        瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)
              
        とにかく 静かだった。

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

私たちは取りあえずドームの中央に移動した。
足元で しずくが動いて回っていた。
鉛筆の先ほどの穴から
   タラ~小さな水滴が一滴だけ溢れてきて
          つーと低い方へと動いていく・・・
   タラ~所々に溜まっている水滴と固まって
         低い方へと動いていく・・・
   タラ~更に大きな塊となりながら
         低い部分に向かって流れていった。

天井にあいた穴から差し込む光を受け
水滴はキラキラと輝きながら徐々に大きな塊となり
まるで生き物のように
白いコンクリートの上で動いて回った。
それは明らかに命を持っている物体のようであった。


  汗   汗   汗   汗   汗   汗


足元で溢れだす水滴のそばに移動し私は主人の耳元でささやいた。
      「 座ろうか・・・ 」


私はどうすれば絵になるのか考えた。
  正座するべきか・・・
  膝を抱えて座るべきか・・・
  ラフに腰を下ろすべきか・・・
私は取りあえずその場に正座して腰を下ろした。
横で主人は足を延ばし両腕を後ろにつき
リラックスして腰を下ろした。

      瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

            
目の前で
天井に開けられた穴に取りつけられた
白く長いテープが絶えず揺れ動いた。
私たちは風をみた。
見えないはずの風が見えたのである。

茶化すのが得意な主人が真面目に
「気持ちいいなぁ」とつぶやいた。
 
美術や芸術作品に疎い私や主人にも
天井に空いた卵型の穴の
両サイドに止められた白い細いリボンが揺れるたびに
丘の下の瀬戸内海から吹きあがってくる海色の風や
植え付けが終わった棚田を渡ってくる風が
そして美術館を囲む木立の緑色の風が見えた。

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)


  長い時間 私たちは黙って腰を下ろしていた。

  静かな手島美術館の中で
  時折「 ぽろろろ~~ん ぽろろろ~~~ん」と心地よい音が響いた。

  少し離れたところに
  直径2~3cmの穴が開いているのが見えた。
  一塊になった水玉がその穴の中に落ち込むと
  「 ぽろろん  ぽろろろ~~~~ん」と風流な音が鳴り響いた。

  主人が小さな声でつぶやいた。
  「 水琴窟(すいきんくつ)だ。 江迎町本陣の庭園にもあるぞ。」と
  私の住む町の酒蔵「本陣」の水琴窟をそっと教えてくれた。


瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)





瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)



  風を感じ
    水玉の中に輝く光に見とれ
       風流な音の奏でる中で
          心の休まる時が流れた。


その素晴らしさを言葉で言い表すには私たちは言葉を知らなすぎた。
しかし  
時間が経つにつれて私も主人も同じ言葉が口をついて出てきた。

    「 豊島(てしま)美術館。 良かったねぇ・・」

          「 良かったなぁ!」

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)

瀬戸内海に浮かぶアートの島 豊島(てしま)


   



Posted by パールじゅんこ at 02:47│Comments(2)
この記事へのコメント
じゅんこさん。

ご無沙汰しています。お元気ですか。いつもいつもブログ拝見させていただいています。何ででしょうか、じゅんこさんのブログを読むと、心が落ち着きます。

今回は豊島に行かれたのですね。私は瀬戸内海に面した市に住んでいますが、直島付近には行ったことがなく、じゅんこさんのブログの写真を見て行ってみたくなりました。
Posted by なほこ at 2015年07月03日 17:42
なほこさん
 お元気ですね。
 私も年を忘れて元気で働いています。

 みいは相変わらず痩せっぽっちですが元気に暮らしています。

 毎日とっても忙しくて目が回りそうです。
 いつになったら ゆっくりと暮らせるのかな・・・と
 ぼやいています。

 しかし
 自分で忙しくしているのでしょうね。

 まだまだ 旅をしたいところが沢山あります。
 まだまだ欲張りです。

 実は豊島には仕事で行ったんですよ。 
 有名な島だったので主人を誘いました。
 仕事は午前9時に終わったのであとは私の自由時間だったから
 のんびりと豊島観光を楽しみました。
 隣の直島に渡りたかったのですが
 直島は月曜日が施設の休館日だったのであきらめました。
 「又 来なさい。」ということだと思いました。

 なほこさんも
 私と一緒にブログの世界で旅してくださいね。

 
Posted by パールじゅんこパールじゅんこ at 2015年07月04日 00:27
 
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100%信じている私こと じゅんこです。


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