浮雲

しばらく休んでいた抗がん剤「ゼローダ」を
再び服用することになった。

６錠飲んでいた　ゼローダを５錠に減らして１週間服用。
担当医の指導どうり
私は手足の保湿を心がけた。

常に
薬用ローションと　保湿クリームを指先に塗り
水仕事は手袋をし
事務仕事以外の作業は常に手袋を着用した。

夜と朝　足にも薬用ローションと保湿クリームを丁寧に塗った。

５錠に減らしたゼローダを一週間飲んだが
黒くなっていた指先も　足も
すっかり落ち着いて綺麗になった。

私は生まれてこの方
こんなに気持ちをこめて自分を労わってやったことがなかった。
女に生まれてきたというのに。

この身体に宿った精神で
この身体を６１年という歳月を動かしてきたが
もし　違う精神がこの身体に宿っていたなら
私という人間は
もっときれいな女性だったに違いないと思うと
何だか　身体が気の毒になってきた。

太陽の陽射しをきちんと避けてやってきたなら
　綺麗な白い肌をしていただろうに・・・
きちんと化粧水を付けお手入れも万全なら
　きめ細かい綺麗な肌をしていたはず。
食生活に気を付けて余分なカロリーをセーブしたなら
　余分な脂肪を蓄えずすら～～とスタイルが良かったかな？

ああしていたら・・・
　　こうしていたら・・・
　　　　　綺麗な女性だっただろうに・・・

あぁ　だめだ。
私は野外で汗を流して働くのが気分がいい！

頑丈な身体を持ったことを良いことに
この身体をこき使ってきたことに感謝して
もう少し付き合ってもらうしかないかなこの精神に。
我儘な私に付き合ってもらうとして。

しかし
「ガンをなめるな！」といった主人の言葉を真剣に受け止めて
真剣に治療を受けていかなければならない。

私は
沢山の明日がほしい。

いろんな事への興味があとからあとから湧いてくるのである。
ちっぽけな
笑い飛ばされそうな「興味」が。


　　６月１８日の事だった。
　　職場の裏庭に面したドアに２個の蝶々のさなぎを見つけた。

　　見つけた・・・
　　と言うより　　お客様に教えてもらった。





　　そして　一週間後の６月２５日
　　孵化して　蝶々はゆっくりと壁をつたっていった。

　　残念なことに
　　孵化する瞬間を見ることが出来なかったのである。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　生まれたばかりの蝶々が
　　　丹精込めた花いっぱいの裏庭へと
　　　飛び立つ瞬間を目にすることが出来なかったのが残念。



　だが
　　もう一つのサナギが孵化する瞬間にはぜひ出合いたい。


　素敵な生命の神秘に触れたい思いが
　湧き上がってくるのである。

　なんだか
　今まで以上に　　　これまで以上に
　沢山の事への好奇心が湧いてくるのはどうしてだろう。

　自分の中に
　どんな変化が現れたのかわからないが
　好奇心の強い私は
　その好奇心がパワーアップしたように思えるのである。

　生きていることが素敵で楽しい。

すっきりと青い空も
雲に覆われたどんよりとした景色も
全てが愛しい素敵な世界である。




　　　　　　　

　朝を迎えるたびに大きくなる孫君　ＨＡＹＡＴＯの成長は
　何物にも代えられない
　大きな喜びをもたらせてくれるのである。

　　













　　大自然の中で過ごす時間は　
　　自然に溶け込み一体となったようでなんとも楽しくて愛しい。

　　この感情はどこから湧いてくるのだろうか。

　　神さま・・・
　　この先の私の運命を　
　　過酷なシナリオに書き換えないでください　と祈りながら
　　恐る恐る　やってくる時間を迎える自分がいることに
　　気が付かないふりをしている自分がいる。